「後悔」って






こう言うことを

言うんスね






先輩――…












‡‡紅い罪‡‡
















俺の好きな色…原色。


理由…

何の混合もない、
純粋な色だから…。



その中でも、
俺は特に「赤」が好きだ。

単に俺が赤也だからとか、そんな簡単な理由じゃない。

どちらかと言えば、俺の眼の方で…。





「………。」


授業中。
俺は、時たま愛用している電子辞書で、ある言葉を調べていた。











【あか『赤』】












@七色の一つ。












…血のような色。













…当たり前。
当たり前のことなのだけれど、俺はこの時、この言葉に妙な親近感を覚えていた。







「はぁ〜〜…。」


…突然ですが、
俺は今、恋をしています。

相手は三年の丸井先輩。正真正銘の男の子。

別段、ホモってわけじゃない。

相手が丸井先輩だから、だから好きになった。


…やっぱり、あの髪の赤さが原因?



入学式。
丸井先輩と初めて出逢ったあの日。


「………。」


あんなに綺麗な赤毛の男子が居るなんて、とてもじゃないけど信じられなかった。


「赤い」と言うよりは、「紅い」のが正しいのかもしれないけれど…。



それから俺は丸井先輩に声をかけた。

俺の人懐っこい性格も手伝って、丸井先輩と俺はすぐに仲良しとなった。

そう、俺達は決して仲は悪くない。

どちらかと言えば良い方で。


…でも、
俺が望んでいるものは、そんな生緩いものじゃなくて。









先輩の








全てが、

欲しい――――…‥











これが俺の望み。

軽い容姿とは裏腹に、内心はこんなにも腹黒い。
自分でも嫌気がさしてくる。


「………。」


…丸井先輩は俺の先輩で、俺はその後輩で、同じ男だから。

だから、気にも止めてもらえないと思ってた。

ましてや恋愛感情なんて。
そんなのあるわけないと思って、ずっとずっと諦めてた。

そんなの、
夢のまた夢だって…。







「あ〜〜スイカ食いてぇ〜〜。」


その後、廊下でばったり丸井先輩と鉢合わせた。

…噂をすれば何とやらとは良く言ったもんだ。


「あ、丸井先輩。」

「おうっ!元気か?少年。」


相変わらず口元には、きっちりと愛用のガムが収まっていて…。

妙に甘酸っぱさが、
鼻をついた。


「ウィッスっ!元気溌剌っスよ!」

「そか!なら、よしっ!」


俺の返事に丸井先輩は満面の笑みを向けてきた。

…正直、俺はこの顔に弱い。


この顔を見た時、俺には先輩が妙に可愛く見えてしまって、思わず抑えが効かなくなりそうになるから…。


「ん?この臭い…。」

「え…?」


先輩の笑顔に意識が飛んでいた俺はハッと我に返った。


「何か甘い臭いすんな…。」


そう言うと先輩は、俺の近くに顔を寄せてクンクンと小刻みに鼻を動かした。


こうして見ていると、先輩がまるで犬のように見えてくる。


「…?何スか?先輩。」
「お前…何かスイカの臭いがする。」

「Σえっ…ι」


しまった。

今朝、近所の婆さんに無理矢理持たされたやつι
親に渡しゃいーのにわざわざ俺に渡すんだもんなぁ。
どーかしてるぜ、あの婆さん…。


そのせいで俺は遅刻。

センコーから大目玉を食らうわ、丸井先輩にバレるわ…。


全く持って、悲惨な運命だ。


「お前っ、俺に隠れてスイカ食ったろ!?」

「Σぅえっ!ιご、誤解ですって!丸井先輩っ!ι」

「問答無用〜〜っ!!」

途端、丸井先輩は俺の首に勢い良く腕を絡ませ、思い切り締め始めた。

気管が締まって、
酷く息苦しかった。


「Σぐっιちょっ先ぱ…っマジ、死…ぬι」

「離して欲しいんなら早く自白しろ〜〜ぃっ!!」
「ぅっ…すみませ、したっ!ι」


俺はあまりの息苦しさに負け、思わず謝ってしまった。

無意識だからと言っても、何で俺が謝んなきゃならないんだろう。

俺は何も悪くないのに。

「よしっ、認めたな!!なら今日、お前ん家にスイカを奪還しに行く!」
「はぁ!?ι」


すると、先輩は『スイカ奪還作戦』を兼ねて俺の家に遊びに来ると言った。

かなり妙な展開だけど、俺にはそれが密かなチャンスで…。







その夜、丸井先輩は約束通り俺の家にやって来た。


「よ!ちゃんとスイカ切って待ってたか?」

「はいはい、ちゃんと切っときましたよ〜。」


すると、先輩はドタバタと家に上がり、庭の縁側へと腰を降ろした。


「早く持って来〜い!」
「………。」


まるで殿様気分だ。

俺は渋々、縁側にスイカを運んだ。

すると先輩は、待ってましたとばかりに思い切りスイカに食らいついた。

「かぁ〜うんめぇ〜っ!」

「………。」


調子のいい奴…。

そんなことを思いながら、俺は先輩と共に、赤くて丸いスイカに舌鼓を打った。





「――――でさぁ〜…。」


その後、俺達は色々な話で盛り上がった。

盛り上がったと言っても、俺は只先輩に相槌を打っていただけなのだけれど…。


「そこで幸村と真田の奴が――…。」


正直、俺は先輩の口から俺以外の男の名前なんて聞きたくなかった。

…恋愛感情なんて持ってもらえないことくらい、とうに分かっていた。

分かってた。
分かってた…けど、

やっぱり
諦め切れない。


最初は我慢してた。

でも、その我慢にも限界があって…。


そう思っていたら、俺は無意識のうちに丸井先輩の身体を押し倒していた。


「え…?」


先輩はいきなりのことに凄く驚いていた。

驚いて、戸惑って…。


当たり前。
当たり前のことなんだろうけど、けど…。


…酷く、
怯えた眼をしてた。


「ゃ、ヤダ赤也!止めろよっ!!」


勿論、丸井先輩は抵抗した。

けど、

その抵抗も
怯えた表情も、


全て
俺には逆効果で…。


余計に欲を掻き立てられた。


「いいね、その顔…。すっげぇクる。」


瞳が赤く染まる。

俺は先輩の両腕を強く押さえつけた。






そして









そそり立つ欲望の中









俺は嫌がる先輩を

無理矢理――…









…犯した。










…行為中。
先輩は俺の腕の中で、ずっとスンスン泣いていた。


身体の奥底から沸き上がる快感を認めたくなかったのか、きつく唇を噛みしめて、込み上がる欲望を必死になって堪えていた。


…下唇からは、微かに鮮血が流れ出ていて。

唇が、
余計に紅く見えた。







「ん…。」


眼が覚めると、そこに先輩の姿はなく、只床の所々に赤い斑点が散らばっているだけだった。


窓の外に眼をやると、そこはまだまだ真っ暗で、月が煌々と顔をのぞかせていた。


…その日は満月で。

その月は、
妙に全体が紅く。

…紅く。
染め上げられていた。


「…紅い……。」


ポツリ、
切原は呟いた。

途端、切原の眼からポタポタと涙が零れ落ちた。

「っぅ…く、ぅっ…ふっ。」


…これは、
何に対しての涙だろう。







ふがいない自分への怒り?









丸井先輩への謝罪?











それとも――…。












その後、
切原の涙は枯れることなく流れ続けた。


まるで、
紅にまみれた一日を

全て、
洗い流すかのように…。

(END)


BACK

【お買い物なら楽天市場!】 【話題の商品がなんでも揃う!】 【無料掲示板&ブログ】 【レンタルサーバー】
【AT-LINK 専用サーバ・サービス】 【ディックの30日間無利息キャッシング】 【1日5分の英会話】