羊の声


君の歌が、もう一度聞きたい。
その、深く沈み込むような暖かさを秘めた声を、もう一度俺の耳に届けてほしい。
痛いほどに感じる君の声。
もう後戻りなんて出来ない。
…初めて君の声を聞いたあの日、俺は君から何かを感じ取ったんだと思う。
第六感が働く俺が感じたもの、それは…君と俺との同一細胞。
同一細胞…意味はそのまま、同じ細胞。
…俺と君とは真っ赤な他人。
だから、全て同じに出来ているわけじゃない。
身長も異なれば、体重だって。
ましてや声なんて…生まれ持ったものがこんなに容易く変わるとも思えない。
でも…俺達は同じだった。
確かに、微かなる違いはあったものの、声のベースはまるっきし同じ。
試しにした羊の真似もそっくりで…。
正直、少し驚いた。
俺と同じ声を持つ者が、一人でもこの世に存在していることが驚きだった。
これを「奇跡」と言うのだろうか?
だとしたら、俺達は運命的な出会いを果たしたわけで…。
普通は素直に感動出来るはずなんだけど、けど…。
今日で君とはお別れだから。
お別れしなきゃ、いけないからっ。
だから素直に感動なんて、出来るはずがなくて…。
気づくのが遅すぎた?
ううん、別れが早すぎたんだ。
こんなにも早く君との別れがきたのなら、もっと沢山君の声を聞いておけばよかった。
もう、後悔しても遅いけど、けど…もっと、聞きたかったっ。
君の声が愛おしい、君の声が望ましい…。
もっと、もっともっともっと!
君の声が、ほしいっ。
愛くるしい君の声が…。
羊の歌が聞こえる。
もう君は居ないはずなのに、可笑しいよね?
こんな現象。
…この声、俺が一番求めてた…。
非常に愛おしい、君の声。
今一度、俺の耳に届け給え――…。

(END)





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