負け犬の咆哮


誰にも負けん。
アイツとの約束を守るためにも、絶対に負けるわけにはいかないのだ。
…一度でも、全国へ手を伸ばした者は、皆負けを許されぬ存在へと変貌する。
しかし俺はアイツとの大切な約束を破ってしまった。
…敗北。
たったこの二文字で、アイツとの約束は簡単に破れてしまった。
「一緒に全国へ行こう」と言う約束を、こうもあっさりと…。
何度謝っても足りぬくらいの重罪を犯した。
愛する者の約束さえろくに守れない俺は、何と情けない男なのだろうか。
この時、俺のプライドはズタズタに傷ついた。
…これも運命か?
…運命。
今の俺がこの様な気障な言葉を口にしたとしても、お前には只の負け犬の遠吠えにしか聞こえないことだろう。
…周りの者は俺を見た目で判断し、強い、最強などと戯言を抜かす。
だがそれは只の肩掛きに過ぎん。
本当の俺は臆病な負け犬だ。
強い相手との試合前は、必ずと言ってもいいほど手足が震える。
これは武者震いなんかではなく、本当に恐ろしさを察知したがための震え。
…もし負けたら。
もし負けてしまったら、自分はどうなる?
立ち直れるのか?
そんな不安がこみ上げ、震えを誘う。
…どうか震えよ止まってくれ。
この恐怖心と共に、心の闇へと消えてくれっ。
何度も何度も、心の中で、願いを唱えた。
しかしなかなか震えは止まらず、俺の恐怖心を煽る。
…何故止まらない!
いつもなら、もうとっくに止まっているはずだ。
なのに、何故っ…。
こうして俺は負けた。
そう、俺は自分自身の弱さにに負けたのだ。
…情けない。
皆に恥晒しと言い、罰を下していた。
だが結局は俺が一番の恥晒しだったと言うわけか…。
俺は単に、自分自身のふがいなさに腹を立て、皆に八つ当たりをしていただけだったのか?
ならば自らに天罰を与えねばならん。
…俺の愛する最愛の人よ、最後に負け犬の砲哮を聞いてくれ…。

(END)




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