蝉の声


夏が来るたびに思い出す君の事。
君はまるで蝉のように、一夏で命の終わりを遂げた。
…蝉の生涯は短い。
蝉の生涯は、計:七年と一ヶ月。
そしてその中の七年を土の中で密やかに過ごし、残りの一ヶ月を、土の中で温存させていた細胞を一気にふる回転させ、思い切り鳴き叫び過ごす。
それはある意味とても華やかな生涯で…。
どんな一生よりも美しく見えた。
まるで花火のようだと。
…沢山の火薬をため込み、
それを一瞬で破裂させる。
とても潔い終わり方だと思った。
君も、こんな死に方を望んだのだろう…。
激しい真夏の炎天下。
強く鳴き叫ぶ蝉の声。
そして、君が寝ころぶ草の上。
…俺は余りの熱さに視界がボヤケた。
この美しい情景を信じたくなかった。
…君は、俺が初めて人を好きになろうと決意出来た人で。
俺が、初めて好きになった人で。
俺が初めて、愛した人で…。
世の中には腐るほどの女がいる。
…こんなことを毎日考えつつ、まともな恋愛をしようとしなかった俺に光が指した。
その光は君自身で…。
その光は、俺の腐った根性を、また一から叩き直してくれた。
俺は、この人とならきちんと道理にかなった恋愛が出来る。
そう思った。
なのに…。
こうして俺の初恋は幕を閉じた。
夏が来るたび思い出す。
君の可愛いあの言葉。
あの時、君の声は微かに震えてて…真っ赤になって慌ててて、とってもとっても、可愛かった。
…夏が終わる。
愛おしかった君の居ない夏も、大分終わりに近づいた。
これで忘れられるだろうか?
君との愛しくて暖かい思い出を。
…蝉の声が聞こえる。
耳が痛くなるほどに鳴き叫んでる。
この声と共に、僕の胸は酷く痛んだ。
…君を思い出してしまう。大好きだった君の事を。
忘れたかった、あの日の事を…。
こうして俺は、今年も熱い夏を過ごす。
君を忘れられず、毎日を坦々と過ごしてる。
毎日煩い蝉の声を聞きながら…。

(END)




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