死相


俺の命は残り後僅か。
正直、自らの「死」を実感するのに、少し時間がかかった。
…今、彼はどんな気持ちで居るのだろうか?
悲しい?
寂しい?
それとも、辛い?
きっと全てが当てはまることだろう。
選び抜くことなど不可能だと思う。
…彼は非常に俺を好いてくれていた。
勿論、俺も同様に彼を好いていた。
…素直な笑顔。
可愛らしい仕草。
彼の全てが愛おしく、何もかもが鮮明に思い描ける。
彼との楽しい思い出も、彼の優しい温もりも…全て、鮮明に浮かび上がる。
…もう彼を抱きしめることも、彼に微笑みかけてあげることも出来ない。
そう思うと、悲しさと寂しさが同時に込み上げた。
…ヒシヒシと「死」への恐ろしさが沸き上がる。
怖い、彼に忘れられてしまうのがっ。
彼に触れられなくなってしまうのが…酷く、怖いっ。
…俺が死んだ後、いつか彼の記憶からは「俺」という存在が消えてしまうのだろうか?
嫌だ。
そんなのは、いくら何でも悲しすぎる…。
どうしてもこの身が消えてしまうというならば、せめて…せめて俺の記憶だけは、永遠に彼の中から消えないよう、しっかりと刻み込んでもらいたい。
二度と忘れることのないように。
二度と、忘れることの出来ないように…。
何時しか彼への想いは、友情から「愛情」へと変わっていった。
…彼を愛してる。
この気持ちに気づくのに、差ほど時間はかからなかった。
…彼に触れたい。
強く強く抱きしめて、苦しいほどのキスをしたい。
痛いほどに髪を撫でて、嫌になるほど話をしたい。
こんな在り来たりな願望が、今後出来なくなる。
そう思うと胸が張り裂ぬ思いだった。
もう何も出来ないのなら、せめて最後の足掻きを…。
ずっと君を愛させて?
君への俺の思いは永遠に、果てしなく続かせてみせるから。
だから、最後の俺の願いを聞いてくれ…。

(END)





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